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May 14, 2015

ベライゾンがAOLを買収

米国時間の12日、通信大手のベライゾンが、AOLを買収することで合意。
買収額は44億ドル(約5300億円)、AOL株を1株あたり50ドルで買い取ると報道されています。

ベライゾンは、日本で言うと「KDDI」。
巨人AT&Tが地域毎に分割された時の1社、ベル・アトランティック社が他の地域通信事業会社を取り込みながら大きくなりました。

AOLは、1985年にパソコン通信サービスを始めた「Quantum Computer Service」が元となっているので、誕生は「ニフティ」のようなもので、1997年には、そのニフティと提携していた「Compu serve」を買収。

翌98年にはNetscape Navigatorを開発した「Netscape Communications」を買収し、折からのITバブルに乗って事業を急拡大しました。

ピークは2000年。
膨れあがった時価総額を利用してタイムワーナー(映画のワーナーブラザーズ、CNN等を保有)を実質的に買収して合併。

当時のタイム・ワーナーは、時価総額20兆円あまりと、現在のベライゾンの時価総額(24兆円)に匹敵し、「究極の下克上」「驚愕の結婚」等と言われ、当初から批判的な声が多く聞かれました。

2003年、AOLタイムワーナーは決算で約1000億ドル(12兆円)という天文学的な最終赤字を計上し、社名からAOLを削除。
2009年には、とうとうAOLがスピンアウトさせられ、元の木阿弥状態になりました。

新興IT企業が老舗コンテンツ企業を買収してスピード経営で付加価値を増す、という当時のM&Aコンセプトは、日本において、ライブドアがフジテレビの支配権を狙ってニッポン放送の株式を買い集めるという形で模倣されましたが、こちらも成功しませんでした。

現在のAOLは、ハフィントンポスト、ITニュースのTechCrunch、ネット広告などのサービスを手がけており、事業領域が重複している米ヤフーと一緒になるべきでは、と言う論調も多々見られるところでした。

日本で最も上手くブランドを構築したネットサービス企業は日本ヤフーでしょうが、その時価総額は2兆8000億円。
今回のAOL買収評価額は、その2割以下に過ぎません。

AOLのCEOティム・アームストロングはグーグルの広告販売・営業部門出身で、2009年にAOLへ転身。
今回の”身売り”により、ベライゾンのモバイル営業部門長のような役回りになるようです。

アメリカの数年後を日本が追いかけているとすると、成長に限界が見えてきたメディアサービス会社を大手通信会社が買収するという現象が、日本でも見られることになるのでしょうか。

ちなみにKDDIは、2008年以降、「じぶん銀行」、「au損保」、「au wallet」と相次いで金融サービスに進出し、今年は4月にECサイトLUXA運営のルクサを子会社化し、続けてネットライフ生命に30億円出資して16%株主。

これ以外にも100億円規模のベンチャーファンドを組成するなど、築き上げたプラットフォーム上での多角化に熱心ではあるものの、とことんシナジーを追求しているというよりは、単にバラバラなメニューを増やしているだけの印象はあります。

もっと大胆にやりたくても、孫さんのような才覚も無いうえ、海外で無理すればドコモの二の舞。

国内でも魅力的な部分はグーグルやアップルといったアメリカの巨人が押さえてしまっているので、社内で承認を取りやすいのは、誰でも思いつく金融分野とリスク限定の小粒ベンチャーというのは大企業に良くある話です。

今回のAOL買収に関しても、ベライゾンの株価は無反応で、米メディアでも辛口の意見が多いのが現実です。

何か成長のツールが欲しいベライゾンにしてみれば、仮に全損しても自分の時価総額の僅か2%の買い物。
成長の鈍化したAOLは、強い後ろ盾が欲しかったので、渡りに船。

「胸がドキドキするようなトキメキは無いものの、互いに相手を切実に必要としている熟年カップルの結婚」といったところでしょうか。

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Comments

今回も大変面白く、勉強になりました。

ITバブル時は色々な意味ですごかったのですね。赤字12兆円とは今話題のシャープや東芝が芥子粒のようです。アメリカはスケールが大きいですね、日本企業の過去最大の赤字はどのくらいがあったのかご存知でしょうか。

顧客名簿を持っている大企業はとりあえず金融やればはずれは無い といった感じですね。ソニーはだいぶ前から金融メインみたいでしたが、元のGEは確か金融やめるか別けるとかありましたよね。その他お金と名前を使ってのものまね。海外に打って出ると失敗。内弁慶のような気がします。

先日話題となった任天堂とDeNAの提携も似たような関係でしょうか。

Posted by: 弱気投資家 | May 15, 2015 11:46 PM

弱気投資家さん、こんにちは。

東電の2011/3決算が▲1兆2000億円、2003/3期の「みずほ」▲2兆3000億円が、多分超円以上の例で、今は無い会社では、拓銀の破綻後決算が▲1兆5000億円、さらに長銀、日債銀も兆円単位の赤字出していることは確実ですが、数字の確認ができません。
ちなみに自主廃業を強要された山一は、簿外債務額2600億円ですから、歴史に残るような赤字にはならなかったと思います。

任天堂とDeNAは、一緒にスマホ頑張りましょう的な緩い連合で、悪くは無いんですが、任天堂とガンホーなら完全補完関係で両方ぶっ飛んでいたのに、という感じではないでしょうか。

今後とも、よろしくお願いいたします。

Posted by: akazukin | May 16, 2015 09:43 AM

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