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June 09, 2015

超マクロ展望 世界経済の真実

0568「超マクロ展望 世界経済の真実 」は、2010年の出版ですから、東日本大震災も、最近の原油安という事実も反映されていません。

本書を5年後の今読む意味は、当時の議論に時間を超える普遍性があったのかどうか、今の方が確認しやすいという点にあります。

水野和夫さんは、世界的な利子率の低下を見れば成長の限界は明らかという「悲観論者」であり、リフレ派に反対し、円高歓迎論者です。

萱野稔人さんは、暴力装置としての国家観を中心に経済を語る現実主義的な哲学者で、いわゆる左翼史観とは大きく異なる観察眼を持っています。

水野さんの資本主義観を簡単に言ってしまうと、成長とは「収奪」に他ならないということです。

イギリスの資本蓄積は海賊行為によってなされ、スペイン無敵艦隊を破ったフランシス・ドレイクは海賊出身でした。
アメリカは先住民から土地を取り上げ、中東からタダ同然で石油を買い上げて高成長を成し遂げましたが、オイルショックで石油が高くなると、小型かつエコ技術で上回る日本に製造業の地位を奪われました。

そこでアメリカは金融に活路を求め、WTI先物市場を設立して石油の価格決定権をOPECから市場へ移転。
IT技術をベースに世界のマネーを呼び込み、その利益を軍事力に注ぎ込むことで、領土を所有せずに覇権を維持しました。

欧州と日本は、その恩恵(おこぼれ?)を受けて成長を享受しましたが、新興国が追い付いてくると、収奪利益率(?)は下がり、成長率=利子率は今も低下しています。

一方の萱野さんは、国家と資本が分離したプロセスに注目します。

そもそも人間が生き残るには戦争に勝たねばならず、軍事力を一体として行使するために「王」への権力集中が必要でした。
「王は全てを所有」するので、所有と支配は同義です。

しかしながら、王=国家による経済運営が上手く行くことは限らないのに、国家は常に人民を食わせる必要があります。
そこで国家は、軍事力は引き続き独占しつつ、人民を食わせる経済活動は資本家に任せ、国家は税を徴収することに専念した方が効率が良いと気が付きます。

こうして私的所有権は国家から切り離され、国家は暴力装置を、資本家は労働者を管理するという役割分担が進みました。

国家による支配から自由となった資本は、より有利な利潤を求めて拡散していきます。
16世紀には陸から海洋へと「グローバル化」が進み、現代ではインターネットが遠心力を強化します。

軍事力も、次第に国家から分離して拡散しました。
そもそも現代では、複数国の部品から兵器を作ることが多く、パトリオットミサイルには三菱電機の部品が入っています。

冷戦以降は単純な二国間戦争はほとんど無くなり、「多国籍軍」が当たり前。
シリア内戦や対IS戦争となると、どの国とどの国が争っているのかさえ、即答できなくなっています。
アメリカ製の兵器が敵に渡り、その兵器で米兵が殺されるようにもなりました。

資本が世界を自由に移動するように、軍事力も必要とされる地域に遍く行き渡り、戦争は、「既存秩序と、それにチャレンジする者」との間で行われるようになり、資本も軍事力も、国民国家を裏切って移動するようになっています。

こうして国家間の垣根が低くなり、収奪と被収奪の関係が壊れていくと、「先進国クラブ」の特権は失われ、成長率=利子率の必然的な低下が起こっていくというのが、対談した両者の共通認識となっています。

この歴史観に基づいて考えるなら、もはや高金利=高成長時代は訪れないということになり、どの国家も、来たるべきゼロ成長時代の生き残り方を真剣に模索する必要があります。

その先頭ランナーは、バブルも低成長も世界に先駆けて経験している日本です。

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Comments

世界システム論や近代哲学みたいな要素満載みたいな感じで・・・大学生の時はこんな感じの本を読んで大感動してました・・・。

 経済成長の基準をは量や規模から質、精度、効率へ変更した方が良いのでは。利子率や成長率が低くなるのを前提にしなくてはなどと感じてしまいます。日本も少し生産性向上を重視し始めていたのにまた量的緩和、公共事業・・・。もっとも日本企業の効率性なんて新幹線の時間が正確だぐらいでしかないですが・・・。外資とは雲泥の差のままなのに日本のモノづくりなどと聞くと悲しくなります。

Posted by: 弱気投資家 | June 13, 2015 at 10:13 AM

成長を前提とした資本主義が行き詰まっていることは、私には自明に思えますが、それを認めてしまうと、頭の悪い人がより悪いものに惹かれたり、政治家の存在意義がなくなったりと、色々と現在のシステムに都合の悪いことが起こるので、真実を語れば傍流になることにしておいた方が良い、という力が働くということですかね。

Posted by: akazukin | June 13, 2015 at 11:10 AM

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