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June 08, 2015

世界の不動産利回りの比較

「料金は高く、鑑定評価額は低い」と言われるほど信頼度の高い「日本不動産研究所」が年2回発表する「国際不動産価格賃料指数」。

主要都市における、ハイエンドのオフィスと住宅(マンション)価格が調査されていますので、2015年4月版を基に、世界各地の不動産利回りを試算してみたいと思います。

この指数は、日経新聞5/29の記事「東京の新築マンション、香港の半額以下 円建て比較 」でも使用されていますが、当該記事はアジアにフォーカスしているためか、NYやロンドンには言及されていません。

なお、不動研の資料では、東京を100として指数化されていて絶対値が計算できないため、東京の利回りを、オフィスが4%、マンションが5%と仮定して数字を出しています。

この仮定値は、CBREの調査による、投資家の期待利回りを使用したものです。(CBRE投資家調査結果

まずはオフィスです。
Photo

NY、ロンドンをはじめ、ほとんどのエリアで東京よりも高くなっています。
しかしながら、そもそも国によって長期金利のベースが違うので、主要7都市を選び、当該国の長期金利を差し引いてみたグラフが下記です。
(各国の長期金利は、CEICのサイトによります)

Photo

世界の二大金融都市、ロンドンとNYが5%のラインで拮抗し、上海や香港を上回っています。

際だって低いのは台北で、ほとんど利益がありません。

ちなみに、2010年10月と2013年10月の3年間で比較した場合、台北の事務所賃料は5%しか上昇していないのに、オフィスビルの価格は43%もアップ。

賃料上昇を伴わない価格上昇振りは、他都市と比べても際立っています。
大陸マネーがやって来ると囃してローカルも買い漁る(どちらもチャイナマネーですが)という図式でしょうか。

次はマンションです。

Photo_2

アジアの新興都市は、安定度が低いと思われる場所ほど、利回りも高くなる傾向が感じられます。
ロンドンがNYよりも低いのは、中東やロシアなど、オイルマネーが集まりやすい結果でしょうか。

こちらも長期金利を控除したのが次のグラフです。

Photo_2

上海はマイナス。台北も、ほぼゼロ。

香港はどうにか2%ありますが、いずれにせよ上海、香港、台北と比べて東京が割安と論じることの危険さは明白です。

シンガポールは市場サイズが小さいことがネックですが、オフィスもマンションも、比較的バランスが良い数字であるような印象です。

シンガポールリートは、利回りが5~6%程度で、少し組み入れて見たい気がしますが、東証に上場されている「2045」はETNですし、流動性に乏しく分配金も原則ありません。

最後は、オフィス利回りからマンション利回りを引いた数字です。

Photo_3

最初の仮定では、住宅に1%の下駄を履かせましたが、ここではイーブンに戻してあります。

大阪とジャカルタが変わり者(?)でマイナスですが、それ以外はプラス。
住宅の方が利回りが低いのが主流です。

『オフィスは景気に左右されて不安定だから、2%くらいのリスクプレミアムを求めるのが普通。それが生じていない香港や台北は、オフィス価格がバブル。』という見方も出来そうです。
本調査はハイエンド物件なので、オフィスよりマンションの方に、よりプレミアムプライスが実現しやすいという背景もあるかもしれません。

そもそも日本の投資家は、なぜ住宅に高い利回りを要求するのでしょうか。

借家法による貸し主権利の制限が強い。経費率が高い。投資金額が小規模で効率が悪い。競合に弱く、すぐに陳腐化する懸念が強い。

理由を並べれば、そろぞれ尤もという気はしますが、世界の投資家がどう考えているのか、今後ともオフィス優位が継続するのか、という疑問は残ります。

ちなみに、J-REITの、事務所主体と住宅主体、それぞれ上位5銘柄の現在の利回りを比較してみると(下位銘柄はクレジットリスクが反映されやすい)、事務所主体が平均で2.77%、住宅主体が平均3.25%と、0.5%程度の差が付いています。

上位リートの場合、上に挙げたような不安要素はある程度軽減されているとは思いますが、一定の差は生じているのが、外国人投資家も含めた現状評価のようです。

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Comments

 今回も大変勉強させていただきました。いつも新しい視点を与えてくださり感謝です。今でもJリートは、ほぼフルラインでたくさん保有継続しているので、不動産利回りには関心がありました。

 やはり新聞の記事を額面通りに信じてはいけないですね。記事を書いた人もそこまで詳しく、深く考えていないのかもしれませんね。また、金余りの国があると様々な物の価格が歪められてしまって判断や現状認識が難しくなってしまうと感じました。

 大阪のマンション利回り 高いですね。こんなに差があるものなのですね~。びっくりです。

Posted by: 弱気投資家 | June 09, 2015 08:20 PM

ご指摘の通り、大阪のマンション利回りは高すぎると思います。
どの程度のサンプルを採っているのか分からないので何とも言えませんが、やや異常値という気がします。
東京は元麻布となっていますが、大阪にはそもそもハイエンドの地区が無い、という話もありますが(笑)。

Posted by: akazukin | June 09, 2015 10:19 PM

大阪のデータはちょっと高いですね。確かにハイエンドは無いですが(笑)、ミディアムエンドの一棟ものは7%を切ったくらいで取引されています。

Posted by: iceberg | June 10, 2015 08:27 PM

この調査はあくまで「点」の話であり、実際の鑑定評価のCRにおいて、東京と大阪でこれだけ差が出ますというデータでも無いので、バランスが悪いけれど、そのまま出してしまった、という感じではないでしょうか。
ちょっと補正した方が良かったのでは、という気はしますが。

Posted by: akazukin | June 10, 2015 09:37 PM

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