何でもあり時代のギリシャと中国
ギリシャの国民投票は、現行の緊縮策に「NO」。
とはいえ、ドイツが大きく譲歩することは考えにくいというのが、市場のコンセンサスでしょう。
ドイツ国民は、ごね得を狙うチプラスに辟易しており、仮にメルケルが弱腰になれば、国内での支持を失う恐れがあります。
また、国民投票が切り札になるという前例を残せば、苦しくなれば国民投票というモラルハザードを招きます。
ただし、ドイツが徹底的に悪役とされれば、政治的な汚点にもなりかねず、もう少し早めにギリシャへの債権をカットしておいた方が、結局はコストが安かったという可能性も反省点としてはあります。
メルケルが強情すぎるのか、チプラスが強引すぎるのか。
このチキンレース、フランスが妥協案を提示するような気がしますが、うまく合意出来なければ、ギリシャのユーロ離脱も視野に入りそうです。
その場合には、ギリシャにロシアと中国の色が混ざってくるでしょうが、それも含めてユーログループの損得について、腹を決めなければならないステージになりました。
市場インパクトという意味では、中国株は、より深刻。
上海総合指数は、下げたとは言え、1年前に比べれば1.8倍です。
1年でおよそ2倍になってるのに、なぜこうもオタオタして、捨て鉢気味の株価対策を打ち出すのか。
[参考:中国株ETFが高い、中国当局による緊急株価対策で(ロイター)]
この状況は、中国共産党が、その正当性の唯一の拠り所である「自由は奪ったが、金は与えた」が揺らいでいると考えていることを示しており、もっと金を配らなければ国家が転覆する、くらいの危機感を持っているものと思われます。
実際、株式市場の急落が不動産市場にまで伝染すれば、その不満が政権基盤を揺るがすことは容易に想像できます。
中国には共産党以外の受け皿が無いので、国民の不満は反習近平派の逆襲という形で、政権の流動化に繋がるでしょう。
この真剣さを感じ取った国民は、短期的には市場に戻ってくるかもしれませんが、経済成長が伴わなければ、いずれは我れ先にと逃げていきます。
既に、中国証券監督管理委員会は、一連の信用規制を緩和し、更には不動産も信用取引の担保として認めました。
正に、「家屋敷を質に入れて株を買え」という行為が、社会主義国家(?)において奨励されるという異常事態です。
結局こうした過剰な株価テコ入れ策は、社会全体の債務の膨張による株価バブルを意味するので、失敗すればデフォルトの連鎖が発生し、いよいよハードランディングの可能性も高くなりました。
テロの拡散と共に、世界中で安心出来る場所はドンドン少なくなり、マイナス金利の常態化・同性愛結婚の容認など、伝統的な価値観の枠が緩み、「何でもあり」になっていることを、市場はまだ十分には織り込んでいません。
言い換えると、異常を異常と感じるセンサーが麻痺しています。
この1週間で、WTIが60$→55$まで落ちたのは、早速に表面の泡が剥離した結果だと思われます。
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