イエレンは出遅れてしまったのか
グラフは、青線が新規失業保険申請件数(Initial Jobless claim:以下「申請件数」)で、赤線はFed Rateです。
過去の利上げ開始時期5ヶ所を緑の矢印で示しましたが、いずれも申請件数がボトムを付ける少し手前で利上げをはじめ、その後申請件数が増え始めると金利を下げて景気を刺激するという教科書通りの対応となっています。
そして、今の申請件数は歴史的に見て最も少ない領域に入っており、これ以上労働市場が良くなることは、ちょっと考えにくいという状態です。
つまり、利上げに反対が多いのは、早すぎるのでは無く、遅すぎるからだ、と考えると腑に落ちます。
『今がピークで、株価も自然に修正しようとしている時に、なぜ追い打ちをかける必要があるのか』
タラレバを言っても仕方がないのですが、反省は必要ですから、少し振り返ってみるとすると、アメリカの失業率と株価(DOW)の関係は以下のグラフのようになります。
DOWが金融危機前の14164$を回復したのは、2013年3月ですが、この時の失業率は7.5%。
そもそもまだQE3の途中でしたから、ここで引き締めるという選択肢はありません。
テーパリングは2014年2月に始まり、QE3は10月に終了。
この時、DOWは16700$、失業率5.7%。
FRBは、なお相当期間ゼロ金利を継続するとしていましたが、相当期間を数ヶ月間とするなら、今年に入ってからはチャンスがあったことになります。
例えば、2月の雇用統計はNFPが26万人台で、失業率は前月比0.2%改善して5.5%でした。
まあ、結局はインフレ率とか、全ての条件が揃うようなチャンスが無かったのだから利上げは無理だったいう見方もありますが、だとすれば、唯一元気と思われる米国経済も実はまだ病人で、しかも残念なことにこれ以上の回復見込みは薄いのですから、今後も点滴打って生活するのが正しい診断(?)ということになってしまいます。
レイ・ダリオは、小幅な利上げの後QE4、といった予測を出しているようですが、こうした数字上からは当然の論理的な帰結ということなのかもしれません。
Comments
昔に比べてアメリカは 他国に配慮した金融政策が必要になったと思います。そうすると、昔のタイミングで・・・は難しいのではと感じます。
利上げしたら新興国通貨暴落で、リーマンつぶした時みたいに軽く考えていたことが大問題になったりして・・・なんて冗談です。
これからはドル ユーロ 円 すべてゼロ金地があたりまえ となりそうだとは 考えが浅いでしょうか。
Posted by: 弱気投資家 | September 07, 2015 01:06 AM
過去の利上げ開始は、その後何回かの連続利上げを意味していましたが、無論今回は違います。
私は、1回だけ利上げなら、ある程度織り込まれているので、大きな混乱無く出来るような気がしていますが、モチロンやってみないと分かりません。
先進国全てゼロ金利時代というのは、いわゆる長期停滞論の立場に立てば、十分に有り得る話だと思います。
それを避けるためには、開発途上国等を支援し、高い成長が期待される投資機会を作り出していくことが必要だと思いますが、そうした取り組みに成功しているとは言えない状況になっています。
Posted by: akazukin | September 07, 2015 08:01 AM