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September 18, 2015

FRBは利上げ出来ず

最近では最も注目されたFOMCでしたが、採決は9:1で、利上げ見送りとなりました。
今回ほど、「上げられなかった」という表現がしっくり来る機会は、多分ないでしょう。

タカ派の市場筋からは「FRBはチキンだ」という声さえ聞こえてきますが、なぜ絶好のラストチャンス(?)を活かさなかったのか。
それは、「利上げして直後に利下げ」という赤っ恥だけは避けたかったから、だと私は思います。

そもそも、10月以降に何か良くなる根拠があるのかと言ったら何もありません。
つまり、今回を逃して結局利上げができないという羽目に陥っても、赤っ恥よりはマシ、と割り切ったのだと思われます。

そもそも声明文に、「国際情勢」という言葉が入って話題になったのは、今年の1月でした。
アメリカ経済だけを見て決めるという姿勢が、徐々に「柔軟」になり、今回の会見では「特に中国と新興国に注目している」という具体的な発言まで飛び出しました。

アメリカを除く世界経済の実態は、そのくらい悪いという認識が、FOMC委員の中で共有されたからこその、9:1だと考えられます。

その中国に関しては、既にポストバブルとでも言うべき状態で、投資主導による高成長が終わり、消費主導による経済に移行できるかどうか、相当に不透明な状況だと思われます。

無論、中国には起業意欲旺盛な若者が大勢おり、サービス産業での新業態が生まれる可能性も十分にあるでしょうが、旧態依然とした国営企業が幅をきかし、多様性を嫌悪する政治体制の中で、自由な発想がどこまで経済成長を牽引できるのかは未知数です。

人口ボーナス期が終わり、ルイスの転換点を越えたと指摘される中国。
硬直的な株価対策しか打ち出せなかった政権が、果たしてフレキシブルな経済運営が可能かどうか、ハードルは高そうです。

中国の高成長は戻らないという前提に立てば、コモディティ価格の低迷は長期化します。
インドは、決定に時間のかかる民主主義国家ですから、爆食中国の後継者にはなれそうもありません。

資源価格が低迷するなら、ロシアもブラジルも豪州もアフリカ(南ア)も期待できず。
しかも恐らく、アメリカの労働市場は今がピークです。

当分の間はインフレにはならないでしょうし、長期金利も当然上がらないというのがメインシナリオ。

今年は年初から保守的運用を心がけてきましたが、今後は更に保守的な姿勢が必要とされるように思われます。
楽な時代は昨年で終わりました。

世界は低成長にイライラし、政治家は右と左に極端化し、ありもしない絵空事を並べて頭の悪い有権者の関心を引くことに躍起となるような世界が想像されます。

既にイギリス労働党では国歌も歌わない左翼主義者がトップになり、アメリカ大統領選挙の共和党内レースでは、放言し放題の不動産屋が支持率首位。

残念ながら、右にも左にも、お花畑はありません。

現状を尊重し、地道に修正を加えていくことに満足しなければ、もっと酷い社会が待っていることは歴史が教えています。

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Comments

もともと通貨価値だけ見ていれば良かったはずの中央銀行が、
労働市場の動向に左右されたり、今回みたいに海外の経済動向の面倒も見たり。
まぁどっかの国みたいに株価まで見るのは言語道断だと思いますが。

それにしてもアメリカ以外は総崩れになってきました。
ファンダ的にも、技術的なイノベーションの意味でも、群を抜いていますね。

優秀な人材が皆アメリカに吸い上げられているから、
という要素も真面目にある気がします。

Posted by: yamazakidog | September 18, 2015 10:17 PM

確かに、アメリカとそれ以外で、これほどデカップリングしたことは記憶にありません。
ITに代表される、成長のデルタの部分は全部アメリカで生まれてる、っていうことですかね。
但し、今の時代、いつまでも一人勝ちは難しく、新興国が更に崩れれば自分にも跳ね返る、だから利上げを躊躇したとも言えそうです。

その最強アメリカでさえ、2%ちょっとの長期金利を払うのがやっとなのですから、世界の成長率の鈍化は深刻、というより、レベル感を改めないと、大変な勘違いをすることになるのかもしれません。

つまりは軽々に、2%の物価目標は達成できるなどと、昔の感覚で言ってはいけないのでしょう。

Posted by: akazukin | September 18, 2015 11:44 PM

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