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October 12, 2015

問題含みの日本郵政グループ上場(2)

上場3社を個別に見た場合、既上場銘柄と最も比較しやすいのは「ゆうちょ銀行」です。

以下のPERは、9月10日に公表された2016年3月期の連結純利益予想に基づきます。

「ゆうちょ銀行」の仮条件は、1,250円 ~ 1,450円
当初想定株価1400円を基にすると、予想PER19.7倍、予想配当利回り3.6%(配当性向59%)といったレベルです。

主要メガバンク銘柄は、

三菱UFJ    10.3倍 2.4% (24%)
みずほFG    9.1倍 3.1% (29%)
三井住友FG   8.1倍 3.1% (25%)

PERでは非常に割高ですが、配当を手厚くして売ろうという魂胆がミエミエです。

業務純益率は0.25%程度と、地銀の平均0.5%の半分レベル。

利益の半分以上を配当に回して利回りを魅力的に見せていますが、内部留保が少なくなる分、今は割安と言われているPBRが次第に割高になり、理論上は株価が上がりにくくなります。

もしもメガバンクが「ゆうちょ銀行」並みに配当性向を増やせば利回り6%程度になり、「ゆうちょ銀行」の利回り面での優位性は無くなります。

ここまで考えない、田舎のおじいちゃん、おばあちゃん等の投資家向けには、これで良いと踏んでいるのでしょう。

運用方法は国債を含めた債券運用が76%ですから、金利が上昇したら終わる構造。

国債と心中するかどうか、正に「お国のため」の踏み絵。
財政危機にも関わらず、既に年金をフル受給しているような人は、お国に感謝するため、多少の割高感など気にせずに買うべきだ、というのが「一億総郵政株主政策」の真意という理解になるでしょうか。

「かんぽ生命」。

仮条件は、1,900円 ~ 2,200円。

当初想定株価2150円を基にすると、予想PER15.4倍、予想配当利回り2.6%(配当性向40%)です。

上場している大手生保は、第一生命とT&D(太陽生命&大同生命)だけ。
そもそも生保は上場すべきかどうか、いまだに議論があるところで、個人的にも疑問は残ります。

第一生命   14.1倍 1.7% (24%)
T&D      12.7倍 1.6% (21%)

かんぽ生命のPERは、やや割高。
仮条件下限の1900円なら、概ね同等です。

ゆうちょ銀行同様に、配当を手厚くして利回りを良く見せています。

こちらも運用手段は債券が76%で、金利上昇で終わる構造は一緒です。

メガバンクの場合と同様に、第一生命が配当増やして対抗してきたら、「かんぽ生命」は利回りで負けますが、「ゆうちょ銀行」の割高度よりは、「かんぽ生命」の割高度の方が、投資家サイドから見て、まだマシとは言えそうに思います。

「日本郵政」

そもそも日本郵政グループの利益は、その9割以上が、ゆうちょ銀行とかんぽ生命。
なぜわざわざ、非効率な郵便事業を含めた日本郵政を買わなければいけないのか、理解に苦しみます。

3社セットで買わせようとする動きがあるようですが、それは日本郵政を買う非合理性を顕在化させたくないからでしょう。

繰り返しになりますが、わざわざ上場を回避した「日本郵便」だけを持つ親、になる可能性のある「日本郵政」の上場は適切なのか、という疑問が残ります。

そもそも赤字体質の「日本郵便」が上場前に黒字化出来たのは、金融二社からの手数料収入に依ると言われています。

その結果、「ゆうちょ銀行」の経費の54%、「かんぽ生命」の経費の70%が「日本郵便」会社への支払いになっていると報道されています。

将来、金融2社の株主に突き上げられて、手数料の減額が争いになったような時に収拾が付かなくなる、といったリスクも想定されます。(だから、どっちに転んでも良いように3社持っておけ、という見方はあるかもしれませんが)

日本郵政の仮条件は、1,100円 ~ 1,400円。

当初想定株価1350円を基にすると、予想PER16.4倍、予想配当利回り3.4%、配当性向54%です。
どこと比較するのが適切か良く分かりませんが、一般的な水準から見て特に割安ではありません。

纏めると、

・将来像は不透明で、親子上場が解消される確約は無い。
・仮に親子上場が解消されると、「日本郵政」は「日本郵便」への依存度が高くなり、収益性が落ちていく。
・全てにおいて政治性が非常に強く、将来に渡って合理的な経営が成されるかどうか不明であることが最大のリスク。
・非上場の「日本郵便」を含め、手数料等のグループ取引が多いのは、将来の争いの種。
・バリュエーションはPER面で割高。配当利回りは高いが内部留保は犠牲にしているので、株価は上がりにくい。
・債券運用に依存しているため利益率は低い。PBRが割安に見えるのは、資産の有効利用度が低いから。(だからアップサイドがあるという見方は出来るが、そこは政治依存が阻害要因となりそう)

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Comments

 よく目にする情報は、個人投資家に大人気とか、スイングトレーダーなども、イベント投資の為なのかたくさん申込する ばかりでした。ついつられそうになる といった事は無かったのですが なんだか良い気分ではなかったです。きちんと理解する事ができて大変助かりました。本当にありがとうございます。

Posted by: 弱気投資家 | October 12, 2015 at 12:48 PM

弱気投資家さん、いつもコメントありがとうございます。

何しろ国家的イベントですから、別に失敗を望んでいる訳でもないですし、市場がどう反応するのか自信はありませんが、調べれば調べるほど、首を捻る部分が多いというのが、正直な感想です。

本文の最後に書き忘れましたが、今や国家と中央銀行こそが市場の最大のリスク要因であることに留意すべきかと思います。

情報が分散していて(特に悪い情報が)、本稿は、最近では最も苦労しましたので、ご参考になったとしたら、大変嬉しいです。

今後とも、よろしくお願いいたします。

Posted by: akazukin | October 12, 2015 at 02:01 PM

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