利上げ直後の市場反応
FRBは、フェデラルファンド金利の新たな誘導目標を0.25~0.50%に変更し、2008年12月から継続していた事実上のゼロ金利政策を解除することを全会一致で決めました。
最後の利上げとなった2006年6月(5.0→5.25%)からは9年半振り、その利上げ局面の始まりである2004年6月30日(1.0→1.25%)からは11年半振りです。
言うまでもありませんが、本当に金利がゼロだった訳ではありません。
下図は、今月のFFレートです。
今後の誘導金利の平均値は0.375%が想定されますが、今でも高い時は0.38%があります。
従って「僅か0.25%でも、金利無しから有りへの転換は大きい」という言い方は、正確ではないのですが、とにもかくにも、「これ以上下げられない状態からは脱却」になりました。
株式市場の反応は、多くの人の予想通りポジティブで、DOWは+224$。
ジャンク債も反発、VIX指数は20以下と、イベント前の緊張が解けて御祝儀気分となり、「Buy Everything」の声も飛び交ったと報道されています。
DOWの週足です。
年内18000$台も視野でしょうが、それにはドルが強くなりすぎないことが条件かと思います。
客観的に見て、今年これだけ振れるチャートだと来年は厳しい、と考えるのが普通のような気はしますが、まあそれは個々人の相場観次第です。
債券市場では金利上昇。
2年債利回りは約6年振りに1%超えです。
上の表の通り、10年債が2.27%、30年債はほぼ3%まで来ました。
なお、債券ETFでも、長期社債に投資する「VCLT」や、準債券と言える優先株投資の「PFF」は上昇。
この辺りは、警戒感が解けての買い戻し効果だと思われます。
中央値では、来年4回利上げですが、CMEの金利先物市場で取引される2016年12月の金利は、0.83%ですから、来年2回。
民間よりも、なぜFRBが強気なのかというと、その違いは原油市場の見通しにあるかと思われます。
イエレン議長はFOMC後の質疑応答で、「原油市場の低迷に驚いており、エネルギー価格とドル高が落ち着けば、物価は上がるだろう。でなければ、一段の行動(further action)が必要となる」と述べています。
あくまで原油安は一時的で、インフレ率は上がっていくという主張で一貫しており、穏やかなドル安=原油高=段階的な利上げ、という伝統的な(?)回復シナリオを描いているようです。
例えばビル・グロスは、2%インフレ率達成には時間がかかるとして、イエレンに批判的なコメントを出しており、こうした厳しい見立ての方が市場では優勢ということかと思います。
為替の方は、ドルインデックスは少しドル高で、新興国通貨に対してはややドル安。
現状におけるリスクオンの方向性は、ユーロや円からはドル買いで、ドルからは新興国や資源買いということのようです。
新興国通貨に対してドル安であれば、コモディティは反発方向のはずで、実際多くの代表的資源銘柄が上昇しました。
リオ・ティント+2.8%、BHPビリトン+3.2%、バリックゴールド+7.8%など、特に金鉱銘柄の上げ幅が目立ちました。
但し、原油は上がらず、エクソンは若干のマイナス、リグ関連大手のハリバートンも▲3%。
このカテゴリーだけは、お祭りから取り残されています。
これ以上の資源安は、新興国の財政にダメージを与え、中東地域等の治安悪化に発展する可能性もあるので、イエレン議長の見通しが実現し、コモディティ価格と株式市場のバランスが回復することを望みます。
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