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February 25, 2016

5分で振り返るポンドの歴史

大英帝国を打ち立てた19世紀、ポンドは基軸通貨でした。
日露戦争の戦費調達のため、高橋是清が幾度となくロンドンを訪れて国債発行に奔走したことは良く知られています。

当時の1ポンドは約10円。
是清が日銀支店長だった時の年俸が2000円ですから、1円は今の1万円くらいに相当し、1ポンド=10万円くらいの価値があったのかもしれません。

それだけ、日本の全てが国際的に見て安かった時代だったとも言えます。

イギリスの最大支配権地域は、ざっと下図の通りです。

Englandcolony201602

しかしながら、20世紀前半の二度の世界大戦でイギリスは弱体化。
ドイツとの戦争で疲弊した英国民は、終戦と同時に戦争の英雄チャーチルを政権から追い出し、「ゆりかごから墓場まで」を合い言葉に、福祉政策の充実に舵を切りました。

労働者の権利は保護され、基幹産業は国有化。

働く意欲は失われて産業は非効率となり、60~70年代の英国は、労使紛争の多発と経済不振のため、「ヨーロッパの病人(Sick man of Europe)」と呼ばれました。

ロールスロイスもジャガーもこの時期に国有化され、今では国外メーカーのブランド名として名前が残っているだけです。

何しろ病気の通貨ですから、1970年代前半のポンド/ドルは、2.6→1.6と、4割も安くなりました。

Pounddollar201602583

質素倹約と勤勉をモットーに育った雑貨屋の娘サッチャーは、落ちぶれた帝国の姿に奮起。

「私が戦わなかった日は1日も無い」と猛烈に働き、79年に政権の座に着くと、「働かざる者食うべからず」を旗印(?)に、自己責任、自助努力に基づいた改革に乗り出します。

しかしながら、国有企業の民営化、財政支出削減等は失業率を高め、労働組合から強力な反発を受けました。

とりわけ84~85年にかけての炭鉱ストライキは、さながら内戦のような様相を強めましたが、82年のフォークランド紛争に勝利したサッチャー人気は高く、過激な組合運動は国民の支持を得られずに敗北します。

この頃のアメリカはベトナム戦争後のインフレが長引き、80年代前半のFFレートは最大で19%と、二桁が当たり前の状態。

世界の通貨はドルに引き寄せられ、80~85年の5年間でドル円は200→260円、ポンド/ドルは2.4→1.2と半分になりました。

高いドルに手を焼いたアメリカは、英・独・仏・日の蔵相をプラザホテルに呼びつけ(当時はG5)、そこから為替は反転します。

ポンド/ドルは、85年の1.1から、5年後の90年には2.0近辺へ、ドル円は260円から130円へと、どちらも概ね2倍になりました。

誇り高きサッチャーは、そもそもユーロ加盟に大反対で、ユーロ導入の環境整備のために発足した欧州為替相場メカニズム(ERM)への加盟も認めませんでしたが、彼女が退陣した90年、イギリスはERMに加盟します。

ERMは各通貨の変動幅を制限していたため、ポンドはドイツマルクに引き上げられる格好で、92年のポンド/ドルは1.9近辺を維持していました。

そこに目を付けたのがジョージ・ソロス。

92年9月、過大評価されていると見たポンドを売り浴びせ、9月16日にはイングランド銀行が公定歩合を10%から15%に引き上げて通貨防衛を試みましたが、結局は17日、イギリスポンドは正式にERMを脱退し、変動相場制へと移行します。

9月の1ヶ月だけでポンドドルは2.0→1.7へ下落し、11月には1.5まで売られました。

しかしながら、実力通りに弱くなったポンドによって、イギリス経済は穏やかに回復。

以降のポンド/ドルは、ITバブル崩壊や9.11テロといった景気後退期においても1.4は維持。
リーマンショック後には短期間1.35台がありましたが、間もなく1.4に復帰。

「1.4」はポンドの底値を示す節目として長く機能しているように見えましたが、昨日ついに1.4割れ。
EU離脱を判断する国民投票を6月に控え、1.39台という歴史的安値圏で推移しています。

1990年以降のポンド円のチャートです。

Ponndoenn201602583

リーマンショック前のピークは250円。
地下鉄初乗り料金が1000円(プリペイドカードを使わない場合)になったと、話題になりました。

高い高いと言われるロンドンの物価ですが、今の156円は、物価比較では妥当な範囲に入ってきているように感じられます。

ロンドンのタクシーを2km乗った場合、チップ含めて1000円弱くらい。
ビッグマックは450円で、日本の370円の2割増し程度。

ちなみに、OECDの購買力平価は、1ポンド=150円です。

まだまだ下げるという予想も多いので、旅行に行くとか英企業を買収するとか実需がある人なら、チャンスとも言えそうです。
英国企業ADRも、少しは安く買える理屈です。

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