三大商社決算を、ざっと見
商社の第3Q決算が出揃いました。
三井物産は予想通り(?)の下方修正で、通期最終利益は2400億円→1900億円と、500億円の減額。
内訳は、オマーンの原油権益除却損が193億円、チリのカセロネス銅開発での減損が198億円などです。
3Qまでの営業キャッシュフロー(CF)は4019億円と、前年同期より671億円減少したものの、質の高い資源権益によって逆風下で底力を見せた、という評価もされています。
3Qだけの営業CFは764億円と、前年953億円の2割減。
4割減となる利益ほどの落ち込みではないものの、やはり資源市況の低迷は大きな打撃になっています。
同社が配当64円を維持するコストは1150億円。
今期配当性向は60%となり、現状では来期減配が確実。
言い古されてはいますが、資源偏重のポートフォリオをどう修正していくのかが課題。
若い社長がフレッシュな頭で考えてくれ、ということでしょう。
三菱商事は利益3000億円の見通しを据え置き。
現在のペースだと十分に達成可能ですが、「今後の需要動向を踏まえ、保有資産の評価見直しを進める」と言っているので、今期で膿を出し尽くす決断をするなら再度の下方修正も濃厚です。
3Qまでの営業CFは4317億円と、前年の3577億円よりも増えており、こちらもキャッシュは潤沢です。
当然、来期は首位奪還を狙うでしょうが、どこを伸ばすのか。
4月に社長となる垣内氏は生活産業グループのトップで畜産や食品部門が長いので、やはりそうした周辺部門に注力することが予想されます。
昨年夏、シンガポール市場に上場している食品商社のオーラム社に1300億円出資しましたが、同社の株価は当時よりも大きく下がっていますので、毀損した出資価値を回復するテコ入れも必要かと思われます。
伊藤忠は、純利益が前年同期比21%増の2809億円。
比較的バランスの取れたポートフォリオと、最近の攻めの経営によって、通期利益見通しは3300億円と、ほぼ首位が確定です。
但し、前年同期比で売上も営業利益も減っているのに、最終利益は2割増という構造。
有価証券売却益と税負担の違いにより、800億円ほどの増益効果が発生しているのが主因と思われますが、少なくとも前者は一過性、後者は前期が異常値の可能性があるので、評価は難しいところです。
3Qまでの営業CFは2537億円と、三井・三菱に比べて見劣りがします。
中国案件(CITIC)の連結取り込みで200億円ほど利益が増加しているのは予定通りのようですが、この件では3200億円も立て替えをしていて、その回収が当初予定より遅れることが注記されています。
CITICの直近配当性向は7%に過ぎないので、このままでは毎年700億円もキャッシュと利益が乖離します。
中国側から見ると、利益はくれてやれ、金は渡すな、借りて利用しろ、という構図になっています。
無論、そんなことは承知で虎穴に飛び込んだのでしょうから、伊藤忠の長期的な見通しが試されます。
このままでは後任に引き継げない(?)と、異例の社長続投となりました。
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