ミャンマーで新政権が誕生
個人的な心情としては「ビルマ」と呼びたいところですが、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー氏が党首を務める国民民主連盟(NLD)の政権が発足し、スー・チー氏も外相など4閣僚を兼務して入閣、実質的な最高権力者となりました。
スー・チー氏も70歳ですから、時間的余裕は余りありません。
後継体制を意識しながら、インフラ不足、汚職や腐敗、少数民族との和解、軍との妥協など、様々な課題と向かい合うことになります。
しかしながら、ミャンマーの今後に関して、基本的には楽観しています。
一人あたりGDPが約1100$と発射台は低く、足りないものは幾らでもあります。
ざっくり言って10年前のベトナムという感じですので、同じような発展を遂げるのであれば、GDPが10年で3倍になるくらいのイメージでしょうか。
ミャンマーにおける軍部と民主化勢力との戦いを冷たい内戦に例えるなら、ホットな内戦が終了した2009年のスリランカにも似ています。
スリランカの株価指数は、2009年の安値から現在では3.5倍になりました。
軍事政権が長く続き、社会インフラは不足していますが、義務教育制度に加えて仏教寺院をベースとした寺子屋的なシステムがあり、ミャンマーの識字率は推定で90%以上と良好です。
この点では、ポル・ポトに知識層を破壊されたカンボジアより、ずっとマシだと思われます。
そもそも軍事政権が、不完全ながらも民政移管を進めた理由は、世界から孤立し、中国色に染まることへの危機感が最大の原因だと考えられます。
軍事政権下で中国べったりとなり、スー・チー氏を追放して軍事独裁を続けるという北朝鮮的な選択肢もあった訳ですが、ギリギリのところで国民経済を優先する判断が出来たということは、この国に未来があると判断して良いように思います。
とはいえ、現在の金融インフラは脆弱。
大和証券が支援したミャンマー証券取引所が今月25日に開設されましたが、上場銘柄は1つだけで、ミャンマー出身の実業家、サージ・パン氏が率いる「ファースト・ミャンマー・インベストメント」です。
サージ・パンの人生は波乱に富んでいます。
父親は華僑で、裕福な銀行家。
首都ラングーン(今のヤンゴン)に生まれ、英国式の教育を受けましたが、1962年のネ・ウィン将軍による社会主義革命で一家は私財没収。
親族を頼って北京に逃れるものの、文化大革命が勃発。
12歳のサージ・パンは少年近衛兵となって威張り散らしたものの、世の中の風向きが変わり、再教育名目で雲南省へ追放されます。
隙を見て香港へ逃げ出し、無一文から芳香スプレーのセールスマンとなり、そこで知り合った英国人不動産ブローカーの部下となってビジネスを勉強しました。
軍事政権と癒着する政商が多いミャンマーの中で、欧米スタイルのビジネスを展開するサージ・パンは貴重な存在に見えます。
他のアジア市場に上場されているミャンマー関連銘柄に関しては、かなり古い記事ですが、楽天証券に、「ミャンマー関連銘柄を紹介」があります。
大本命は、ファースト・ミャンマー・インベストメント同様、サージ・パンの傘下にある「ヨマ・ストラテジック・ホールディングス」です。
ヨマは、三菱商事、フォルクスワーゲン、ケンタッキーフライドチキンなど、積極的に外国企業と組んで、ミャンマー国内で多角的に事業を展開しています。
ヨマの株価は、2012~2013年にかけて沸騰し、期待だけで(?)10倍になりましたが、その後は適正と思われる価格まで下落。
現在は、今後の業績を冷静に織り込もうとしている第二幕と言って良さそうに思います。
Comments