ケイコ・フジモリ氏はペルー大統領になれるのか
ペルーの大統領選挙は、6月5日の決選投票が確実となり、日系のケイコ・フジモリ氏(40)とペドロ・クチンスキー元首相(77)との間で争われます。
当初の候補者は、左派のメンドサ国会議員(女性)を含めて3人でしたが、結果的には中道右派の2人が残りました。
伝統的に過激な左派勢力の影響が残る南米ですが、バラマキ型国家社会主義のベネズエラが原油安で国家の破綻に直面していることも、左派の人気低下に繋がったという分析があるようです。
ケイコ・フジモリ氏の父親は、言わずと知れたアルベルト・フジモリ氏。
現在77歳で、ペルーの刑務所に収監中です。
父フジモリ氏は、ペルー経済を立て直し、誰も見向きもしなかった貧困層の生活向上に尽力した中興の祖(?)なのか、冷酷無比な独裁者なのか、その評価は真っ二つに分かれます。
日系二世の父フジモリ氏は、国立農業大学で数学の講師に就任し、後には総長になるなど学者肌の人でしたが、58歳の時に大統領に就任。
市場経済を重視し、外資の積極的導入、開発規制の緩和などを実施し、経済の立て直しに成功しました。
同時に、極左組織「センデロ・ルミノソ」との戦いを強化するため、大統領への権限集中を図り、独裁色を強めました。
特に、1990年代に起きた軍特殊部隊による民間人殺害事件(軍は過激派と誤認したと主張)は強く批判され、父フジモリは殺人罪で起訴されて、2010年に最高裁で禁固25年が確定しています。
父フジモリは2回結婚しており、前妻のスサーナ・ヒグチとの娘がケイコ・フジモリです。
現在の妻は日本人で、目黒のホテルプリンセスガーデンを経営する片岡都美(さとみ)氏。
片岡氏の個人サイトには、靖国参拝のすすめ、革命決起などの勇ましいスレッドが並び、「武士道ここに甦り」という著書もあります。
父フジモリ氏(二重国籍)の現在の日本戸籍名は、再婚を機に、片岡謙也となっているようです。
娘フジモリは、ボストン大学を卒業、コロンビア大学のMBAを取得。
2004年にコロンビア大学の同級生のマーク・ビラネラ(イタリア系米国人、IBMコンサルタント)と結婚し、娘が二人います。
娘フジモリは、前回2011年の大統領選挙にも立候補。
父親の功績面を強調し、父の恩赦にも触れて選挙戦を戦い、第一回投票では2位。
決選投票では、現大統領で左派のウマラが得票率51.4 %に対し、得票率48.5%で惜敗しました。
今回は、左派のメンドサ議員が脱落し、中道右派同士の戦いとなったため、どちらが勝っても市場の混乱はないと思いますが、クチンスキー氏の有利な点は、豊富な経験。
オックスフォードとプリンストン両大学を卒業し、1961年世界銀行に入り、中南米担当のチーフエコノミスト。
その後はペルー中央銀行理事、IMF主任エコノミスト、世界銀行調査部長を歴任し、2000年代には経済財政相、首相を務めました。
経済と政治に精通していますが、年齢は77歳と父フジモリと一緒であり、フレッシュさはありません。
国民が安全な選択をするならクチンスキー氏でしょうが、アンチ・フジモリ感情を払拭して、清新さを訴えることが出来るかどうかが、親子大統領誕生の鍵といった状況でしょうか。
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