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April 15, 2016

中央銀行が終わる日

51dsd3ishgl_sx329_bo1204203200_「中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来 」の著者「岩村充」氏は、日銀出身。

前著の「貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム 」においても、様々な例え話を駆使しながら、貨幣の本質と今後の展開について興味深い議論を展開しました。

今回は、新たに登場した暗号(仮想)通貨を取り上げ、現行の中央銀行システムと比較することで、貨幣の未来を思考実験します。

本書の中で印象に残ったフレーズが二つあります。

一つは冒頭の、ハイエク「隷属への道」からの引用。
ちょっと長いですが、極めて本質的な指摘です。

『われわれの自由社会にとっての問題は、たとえいかなる犠牲を払っても失業が発生することは許されず、その一方で強権を発動する意志もないとすれば、あらゆる種類の絶望的な方便を採用しなければならない羽目に陥ってしまうだろう、という点である。
それらのどれ一つを取り上げてみても、長続きする解決をもたらすことは不可能であり、すべてが資源の最も生産的な活用を深刻に妨げるに至るだろう。
とりわけ注意すべきは、金融政策はこのような困難に対して、何ら本当の解決策を提供することが出来ない、ということである』

もう一つは、著者自身の言葉。
『金融政策が物価の上昇という痛みを伴って実行されているにもかかわらず、それで得られた景気回復の恩恵は一部の富者にしか帰属しないという不都合な現実に直面すれば、日銀の異次元緩和に拍手した人々が今度は冷めた眼で日銀を見るようになるのはおそらく時間の問題なのです。』

ビットコイン等の仮想通貨に関しては、本書の約3分の1がその解説に割かれていますが、とりあえずビットコインの初級本を読んだレベルの人間が次に読むのにふさわしい内容かと思います。

ビットコインには、4年に一度コインの生成速度が半減する、コイン生成費用がキャピタライゼーションされて全体に負担される等のお約束がありますが、こうしたルールによる限界と対策等を中心に、現状と課題が議論されます。

一方の中央銀行に関しては、仮想通貨と違って管理者が存在する安定性がある反面、ゼロ金利による流動性の罠に直面し、そもそも成長が止まった時の役割として何が残るのか、というのが究極の課題です。

特に日銀の場合、伝統的な制約を次々と打ち破って「野心的な」目標に向かってはいるものの、その信認は低下し、マイナス金利の効果は見透かされ、正に「冷めた眼で見られる」ようになっています。

リーマンショック以降、中央銀行は静的な審判の立場から動的なプレーヤーとして積極的に市場に関与していますが、それは中央銀行自身の判断が市場のリスクとなることも意味し、多数決で決めるという市場の客観性が失われることにも繋がっています。

中央銀行が誤った判断をしている可能性があっても、誰もその危険性を計測できないという混沌とした時代に我々は生きていますが、今後の様々なシナリオを考えるための指針を提示してくれているというのが、本書の最大の意義かと思います。

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