どうなるオーストリア大統領選
イタリア国民投票と同じ12月4日、オーストリア大統領のやり直し選挙が行われます。
オーストリアの政治実権は首相にあり、大統領の権限は限定的と言われてはいるものの、大統領は大統領。
そもそもこの大統領選挙、今年の5月22日に行われ、とっくに終わっているはずでした。
決選投票に残っていたのは二大政党(社会民主党、国民党)に属さない、極右自由党のノーバート・ホーファー氏(45)と、「緑の党」の元党首のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏(72)。
ホーファー氏は航空学校を卒業し、空軍と航空会社で働いた経験のあるエンジニアですが、その後自由党に入り、2005年に弱冠34歳で党首となりました。
自由党は現在、下院183議席中42議席(22%)を占めています。
インスブルック大学で経済学を学び、大学の財政学研究所とベルリンの行政国際研究所で働き、専門は財政・公共事業ファイナンス等。
環境保護政党「緑の党」は現在、下院で22議席(12%)を占めています。
5月の投票では、ルックスと若さで勝るホーファー氏が51.9%の得票率で、48.1%のベレン氏に優勢な展開でしたが、70万票の郵便投票が集計されると、ベレン氏が50.4%、ホーファー氏が49.6%と僅差での逆転勝利。
その差はわずか3万票で、オーストリア連邦大統領選挙史上、最も拮抗した選挙となりました。
辛うじて極右大統領の誕生が避けられたと、世界に安堵のニュースが配信されたのも束の間、負けた自由党が「選挙に不正があった」と憲法裁判所に異議を申し立て。
憲法裁の調査によれば、立会人が全員そろっていないのに作業に取りかかったり、決められた時間よりも早く票の集計を始めたりした事例があったとして、異例の再選挙命令。
やり直し選挙は10月2日と決まりましたが、今度は封筒に不手際が発覚。
糊付けされた封筒の側面が自然にはがれて開いてしまう事態が続出。
封筒が開くと、規則により無効票となるため、選挙は再延期され、12月4日の投票となりました。
あらためてオーストリアの位置関係を確認しておくと、いわゆるバルカンルートでもイタリアンルートでもドイツへの通り道。
オーストリアの人口は850万人と、大阪府と同じ程度ですが、そこに昨年は9万人が難民認定を申請。
70万人以上の難民や移民が入国し、その内9割はドイツへと通過したものの、手続きされた件数の対人口比ではドイツをも上回ったことから、国民負担の増加に不満が高まりました。
オーストリアの駅が難民であふれた時期もあります。(写真はザルツブルグ駅)
そのため、反EU、反難民を主張する自由党に支持が集まりやすい環境となっており、再び大接戦になるのではないかとの懸念が強くなっています。
今思えば、5月のオーストリア大統領選の緊迫した結果が6月BREXITの予告編だったのかもしれません。
Comments