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November 20, 2016

財政赤字でドルは強くなるのか

米大統領選挙後、財政出動期待→金利上昇→ドル高、という図式が当然のように語られていますが、果たして歴史はどうなのか。

グラフは、1970年以降の米政府財政状況(対GDP)とドルの実質実効為替レートです。

Fredzaisjko563

青が財政、赤がドル。

基本的には正の相関(財政が良ければドルは強い)で、2回ほど異常期間があったと解するのが妥当かと思われます。

これに従えば、「財政赤字拡大→金利上昇→ドル買い」は長続きしないという解釈になります。

異常期間の第一は、1980年代前半。
1980年のアメリカのインフレ率は13%、FFレートは14%水準でしたから、世界からドル買いが殺到。

インフレ退治を優先したアメリカは数年間我慢していましたが、インフレ率が4%程度に落ち着いた1985年になっても収まらないドル高に切れました。

先進国首脳をプラザホテルに呼びつけて恫喝。
市場への協調介入によるドル安を指示しましたが、どの国が最も従順であったかは言うまでもありません。

まあ今振り返ると、アメリカが強引に市場介入したのも理解できるほどのドル高だったようにも見えます。

第二の異常期間は、2000年代前半~2008年。

この期間が、余りに正常さを欠いていたことについては、今さら語るまでもありません。
これほどの反面教師も滅多に無いでしょうから、この点からも財政の健全性とドルの強さは正の相関になりそうです。

そもそも為替というものは、金利に引き寄せられて高金利通貨を買うものの、結局インフレ通貨は価値が落ちるので最後はドスン。

とはいえ、実際に金利が上がっている間、その通貨は買われているのでは、ということで、金利とドルの関係はどうか。

プラザ合意以降の、米長期金利とドル実質実効為替レート。

Interestdollargh4

長期金利の上昇がドル高を牽引したと読み取れそうなのは、1998-2000年くらいですが、これはITバブルの時期で、その直後には大きな反省期間が登場していますので、好事例とは言い難いです。

仮に足下のドル高を目先の金利上昇以外で説明しようと思うと、FRBの利上げ確実という思惑、トランプリスク警戒ポジションの巻き戻し、アルゴの独走、新興国から投資引き揚げというリスクオフ気分、本国投資法のチョー先回り織り込み、などが候補となるでしょうか。

慌て気味の「債券売り株式買い」は、景気刺激期待によるポジションシフトと表現すればポジティブですが、危なくなりそうな国債から安全そうな(金利上昇に強そうな)一部株式への逃避とするなら、今後の荒天の前兆かもしれません。

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