フィヨン氏って誰?
フランスの最大野党である共和党の大統領候補予備選挙では、サルコジ復活なるかばかりが注目されていましたが、蓋を開けてみれば、最も事前の人気が低かったフランソワ・フィヨン氏(62)が首位。
ジュペ氏との決選投票でも有利と見られています。
サルコジ氏は、トランプ氏の勝利に勇気づけられたのか、ブルカ水着全面禁止、フランスに同化しない移民は去れ、と反移民感情を前面に出して戦いましたが、やや過激すぎたようです。
フィヨン氏は、2007-2012年、サルコジ大統領の元で首相を務めたくらいなので、政治的な立ち位置は中道右派。
リベラル派のジュペ氏よりも、伝統的な(カトリック的な)道徳規範を維持することに重きを置いた候補の方が、予想されるルペン氏との対決に有利、と有権者は思ったのかもしれません。
フィヨン氏の公約は、(1)週35時間労働を39時間に延長(2)定年年齢を60歳から65歳に引き上げ(3)移民受け入れ枠を拡大等となっており、公的部門の雇用を50万人減少、歳出を11兆円削減、法人税減税など公的部門縮小と民間部門拡大を目指す内容。
税金にたからず、もっと働けという、サッチャー的な主張です。
一方、極右とされている国民戦線(FrontNational)のマリーヌ・ルペン党首。
より極右と言われた父親のジャン=マリー・ル・ペンの三女ですが、父親からFNを受け継いだ後、反ユダヤ主義的発言が多い父親を党から除名。
父ルペンの過激路線を、やや現実的に軌道修正し、排外主義で反EUスタンスではあるものの、妊娠中絶や同性愛を一定程度容認。
イスラムの完全拒否では無く、「フランス社会にふさわしいイスラム」を求めるとして支持層の拡大を図り、過激なイスラム主義に反感を持つ穏健イスラム教徒からも一定の支持を得ていると言われています。
その結果、2014年欧州議会選挙では23(全体74の31%)もの議席を得ることに成功し、フランス政界を震撼させました。
最近の世論調査によれば、ルペン氏は第1回投票で25~29%を得票するものの、決選投票では大差で敗退という見通しですが、近頃の番狂わせを見れば安心材料にならない、といった意見もあります。
分かりやすく言ってしまえば、男サッチャーVS女トランプ。
とはいえ、トランプの勝利は一番右側を拾ったことでは無く、むしろオバマ支持層の一部を上手く掬い上げたことにありますから、単純にトランプ現象がフランスに伝播するというものではないでしょうが、現首相バルス氏は、ルペン勝利はあり得るとして警戒を強めています。
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