アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由
アメリカが分断しているのは確かですが、それはトランプが内向きで保護主義で差別主義だからではなく、メディアがトランプの悪い面ばかり強調して嫌悪感を煽ることも一因と考えないと、アメリカ人の半分はいまだにトランプを支持しているという背景が見えてきません。
「アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由」の著者は、米政府関係に勤めるアメリカ人と結婚した日本人女性(現在はアメリカに帰化)であり、民主党にも共和党にも特段の肩入れをせず、一歩引いてアメリカを見ることが可能な立場にいます。
本書が語るように、アメリカンドリームなど、もはや存在しません。
あるのは、政府と大企業の癒着、法外な教育費と医療費、異常な収入格差と貧困、繰り返す銃乱射事件、白人警官と黒人の消えない憎悪、忘れ去られたハードヘルメットの男たち。
かつて世界の誰もが憧れたアメリカの平均像は、吹っ飛んでしまいました。
トランプには、到底容認できないような誇大妄想や時代遅れの経済観、差別的な言動が多々あり、くだらない深夜のtwitterはいい加減にしろと感じますが、それは普通のアメリカ人も同じでしょう。
しかし、今はこの劇薬が必要なのでは無いか。
そう真剣に悩んだこそ、もっと狡猾で外交上の失敗も目立ったヒラリーに投票しなかったのがトランプ支持者であり、著者もその一人でした。
本書でも、オバマケアへの評価は最悪です。
なぜなら、中流層の犠牲の上に低所得者を救う結果になっているからです。
トランプ支持者の多くは、自己責任による人生の選択を重視する人たちですから、同性愛や宗教の多様性にも寛容なはずです。
但し、そうしたマイノリティを政府が過剰に保護したり、税金を使って優遇することには断固反対でしょう。
トランプ側近による「オルタナティブ・ファクト」という苦し紛れの説明が強く非難されましたが、自分が信じる真実以外は否定するという姿勢は、むしろメディアに多く見られ、だからこそ選挙結果を見誤ったのですが、反省の色は見られません。
リベラルという言葉を隠れ蓑に左翼化したメディアに辟易としている人たちを代弁するため、トランプは執拗なまでにメディアを攻撃します。
正に、毒をもって毒を制す。
繰り返しますが、私は人間トランプが嫌いですし、彼の協調性に欠けたやり方が成功するとは到底思えないのですが、成功してくれないと更に多くの人が困るというのが現実なので、過剰な批判は抑制して見守ることが今は必要かと思います。
そう言えば、NYタイムスもCNNも、100日ハネムーンという麗しき伝統を、都合良く忘れているようです。
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