野村證券第2事業法人部
「野村證券第2事業法人部」は、あのオリンパス事件の「指南役」とされた横尾宣政氏の告発本です。
前半は、コンプライアンスなどクソ食らえ、新入社員が過労で自殺しても全く話題にならない時代のモーレツ物語で、筆者が多数の顧客の資産を犠牲にして社内での実績を積み重ねていったプロセスが語られます。
後半では、筆者が独立し、オリンパス事件に関わっていきます。
筆者は高裁で実刑判決を受けて上告中の身であり、本書の中で自己に不利な事実を認めるわけも無く、読んでいて不自然な部分も複数箇所ありました。
「ここはもっと調べるだろう」
「ここであっさりと信じるか、普通」
そもそも筆者は野村證券在職時、オリンパスに二度と財テクなどするな、と何度も諫めたと主張しているのですから、独立してからもオリンパスには一切関わるべきでは無かったはずですが、オリンパスが落とす黒い金の魅力には逆らえず、次第に深みにはまって抜けられなくなりました。
法的見地から見れば、横尾氏よりもオリンパスの経営陣、特に大部分のシナリオを書いていたと思われる山田元監査役が一層重く罰せられるのが妥当かと思われます。(経営陣3名は全員執行猶予)
また、検察が相変わらず安易なシナリオを作り、「企業を守るために止む無く損失隠しに走った経営陣」よりも「金のために複雑なスキームで隠蔽に協力した強欲な個人」を主犯に仕立てて事件の幕を引こうとしたのも多分その通りでしょう。
しかしながら、本書の内容が全て事実だとしても、これで横尾氏に心情的な共感者が多く生まれるかと言うと、それは疑問です。
横尾氏は、真の黒幕に返り討ちを食わせるほどの知恵を持った大悪党でも無く、心から冤罪に同情できるほどの善人でもありませんでした。
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