今週の相場(11/11時点)
今週のS&P500は+5.8%、NASDAQは+8.1%、日経平均は+3.9%でした。
米長期金利は4.16%→3.81%に低下、ドルインデックスは110.8→106.4へ下落、ドル円は146円70銭→138円80銭へ墜落と、激しくドル安株高が進み、米2年債金利も、4.65%→4.33%と大幅に低下しました。
先週は手堅い内容の雇用統計とパウエル議長のタカ派発言で株安でしたが、今週は物価データが株の援軍でした。
10月CPIは、前月8.2%だった総合が7.7%、6.6%だったコアが6.3%へ低下。特にコア指数の前月比は+0.3%と、平常時の+0.2%にあと0.1%に迫る値となって短期投資家は狂喜乱舞、ショートカバーを巻き込んで、NASDAQが1日で7%以上も上昇する異常な過熱相場となりました。
ほんの1週間前、はしゃぎ過ぎてパウエル議長から叱られたことはもう忘れた様子です。
コモディティ市場では、金・銀・銅がそれぞれ5~7%ほど買われましたが、WTIはドル安にも関わらず4%安。
ゴールドはドル安と金利先高観の後退で素直に買われたものと解されますが、原油に関しては景気後退観測のファクターが大きいように思われます。
FedWatchによると、12月FOMCでは0.5%利上げ予想が81%にまで増え、0.75%利上げは先週の38%から19%に半減しました。
来年6月を見ると、予想最多が5.0-5.25%から4.75-5.0%に一歩後退し、来年末は4.25-4.5%が最多と、来年後半には利下げも織り込まれています。
日本人の米国株投資の成績は、これまで株安ドル高でチャラ、今週は株高ドル安でチャラのような風景かもしれませんが、いずれ為替が落ち着けば、株高が円高を上回る収穫期になることが期待されます。
ドル円の今後の推移については、短期的にはポジション巻き戻しの円高潮流が大きいものの、長期的には依然残る金利差と貿易収支の悪化というファンダメンタル上の円安観測が拮抗して、私には予測不可能です。
個別銘柄では、グーグル、アップル、マイクロソフトが概ね1割上昇し、嫌われ者のメタが+24%、エヌビディア+15%など下げたものほど買い戻しが目立つ展開ですが、テスラとディズニーが5%安と、選別意識も生まれてきています。
今後の1年は、高金利状態が続きつつ景気後退リスクがあるので、赤字のチャラチャラ銘柄が投資家に選ばれるとは考えにくく、地味でも低PER高配当、出来れば無借金のような堅実銘柄が見直されることを想定します。
米中間選挙は殆ど相場への影響は無かったものの、仮想通貨業界をめぐるドタバタ劇は、週前半のリスクオフムードを助長しました。
両親がスタンフォード大教授で、本人はMIT出身と毛並みが良いサム・バンクマン・フリード率いるFTX。
自らトークンを発行して、それを担保に巨額のバランスシートを生み出し、破綻した取引所の救済や慈善事業活動にも熱心と、様々な話題を提供してきましたが、業容を拡大していた投資会社アラメダ・リサーチの信用不安が引き金となり、バイナンスによる救済話も1日で破談し、ついにはグループ全体がチャプター11を申請して自分が破綻しました。
FTXは約2兆円以上の顧客預かり資産を持っていたとみられるほか、出資者にはオンタリオ州教職員年金基金やセコイア・キャピタル、ソフトバンクグループ、NFLのトム・ブレイディ氏やモデルのジゼル・ブンチェン氏など著名ファンドや個人がズラリと並び、大谷翔平選手もCM出演していました。
グループの最大負債想定額は500億ドル(約7兆円)と報道されており、クリプト業界における連鎖的な破綻も懸念されています。
この件が、例えばビットコイン自体の本質的な価値を毀損するわけでは無いものの、この業界の相変わらずの杜撰な管理体質や脆弱な価値創造体系が露呈し、いつまたこうした隠れたリスクが顕在化するのか分からないという漫然とした不安を市場にまき散らしました。
時代の寵児はSECの捜査対象ともなっており、デジタルゴールドは本物のゴールドに大きくパフォーマンス負けしている状態で、過剰流動性の消失と共に、株式でもクリプトでも偽物のキラキラが剝げ落ちていく現象が顕著です。
大きな詐欺事件に発展しないとも限らないFTX事件ですが、株式市場においてはCPI低下が全ての暗雲を取り払ったような格好となり、年末に向けての本格的なドル安株高トレンドの発進が予感される1週間でした。
9月以降、「10月安値で以後回復」を株式市場のメインシナリオとして来ましたが、概ねその路線で動いています。
年末にかけては、喜び過ぎるとパウエル議長を再び刺激してしまうので、堅実な割安銘柄が徐々に回復していくような相場が望ましいと思われます。
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