投資観点でのルーマニア
ルーマニアはその名が示すとおり、ローマ帝国ゆかりの土地であり、東欧に位置しながらラテンのノリのある土地柄と言われています。
面積は本州と同じくらいで、人口約2000万人。
独裁化して1989年に処刑されたチャウシェスクに関しては、あまりに多くの悪評が語られていますが、経済面で一つ良い点を探すと、海外からの干渉を避けるため、80年代に極端な緊縮政策を取って対外債務を完済したことで、これによって負担の軽くなったルーマニア経済は冷戦終了後、比較的円滑に成長軌道に乗れたという評価があります。
2007年にEUに加盟し、累計で60億ユーロの助成金と低利融資を受けており、一人当たりの名目GDPは15000$と、この2年間で20%の伸び。アジアだと、マレーシアの3割増し、タイの2倍くらいのレベルになっています。
良く比較される隣国ハンガリーやポーランドの18000$にもう少し。IMFは今年のルーマニアの成長率を3.1%と予想しており、ポーランドやハンガリーを上回っています。
古くから石油が出ることで知られており、1860年代から採掘が始まったモレニ油田は世界で3番目に古い油田と言われています。
風呂好きのローマ人の影響からか温泉開発も盛んで、2017年にはヨーロッパ最大規模の温泉スパ施設「ブカレスト・テルメ」がオープンしました。
有名スポーツ選手としては、体操のコマネチ選手、テニスのシモナ・ハレプ選手などがいます。
米国市場でGDRの形で上場しているのは、電力のソシエタテ・エネルジェティカ・エレクトリカ(ELSA)、フォンダル・プロプリエタテ投資信託会社(FP)、石油ガスのOMV・ペトロム(PETB)、天然ガスのソシエタテ・ナショナル・デ・ガズ・ナトラーレ・ロムガズ(SNGR)の4つだと思いますが、日本の証券会社での扱いは無さそうです。
iShares MSCI Frontier ETF (FM)には、トランシルヴァニア銀行が組み込まれています。先週のKSPIに次いで、同ファンド第二位のシェア(2.8%)です。
同行は資産規模で国内最大、初めてローマに支店を設けたルーマニアの銀行と紹介されています。何しろローマ帝国の末裔(?)ですから、イタリアに進出することは重要なのでしょう。
ドラキュラ伝説で有名なトランシルヴァニア地方は、首都ブカレストのある南部とはカルパチア山脈によって隔たれており、かつてはハンガリー領でした。
「トランシルヴァニア地方の要塞教会群のある集落」は世界遺産となっており、英国のチャールズ国王は、この地方の自然に魅せられて別荘を持っていることが知られています。
同銀行の総資産は4兆円、連結純利益600億円。EPSは、2020~2021年で5割伸長しました。
2022年(3Qまで)は、前年同期比で利益が+19%。PERは7倍前後で取引されており、配当利回りは5%程度。
そもそも独裁化する前のチャウシェスクは訪米してニクソンに大歓迎されるなど、西側との関係も良好でした。昨年のロシアのウクライナ侵攻以降は、ロシア、ベラルーシ、ウクライナからの製造拠点の移転もあり、ルーマニア経済への後押しとなっています。
物価はまだ安く、ビッグマック指数では2.28$と日本の8割、最も高いスイスの6.7$の3分の1水準です。
Comments