投資観点でのアルゼンチン
W杯で優勝したアルゼンチンですが、あれほどサポーターが熱狂するのは、経済がボロボロで、おらがチームのゴラッソ以外に慰めがないからであるようにも見えました。
通貨ペソの弱さは特筆ものなのが、アルゼンチン。1992年から約10年間は1$=1ペソのペッグ制を採用してインフレと戦ってきましたが、2001年のデフォルトをきっかけに通貨価値は一気に3分の1。
通算で9回のデフォルトを繰り返し、この5年間だけでもペソ/ドルは10分の1になっています。
2022年11月のインフレ率は前年比で+92.4%となり、過去30年間での最高値を更新しました。
過去5年のインフレ率(%)は、34、54、42、48、72。
実質経済成長率(%)は、-3、-2、-10、+10、+4。ですが、ちょっとインフレ率をいじれば変わってくるので、あまり当てになる数字とは思えません。
面積は広く日本の7.5倍。人口約4500万人。
一人当たりGDPは1万600ドルで、マレーシアやカザフスタンと同程度。
ノーベル経済学賞を1971年に受賞したロシア生まれの経済学者サイモン・クズネッツはこんな言葉を残しています。
「世界には4種類の国がある。先進国、途上国、日本、そしてアルゼンチンだ」。
アルゼンチンは世界第8位という広大で肥沃な国土を持ち、欧州からの投資により1850年から全土に鉄道網を張り巡らせ、移民を受け入れて農業生産量は飛躍的に拡大。1929年には世界第5位の経済大国だったと言われていますが、その転落も例外的に早かったということでしょう。
穀物自給率は250%とも300%とも言われ、世界3位。
牛の数は5400万頭と人口を上回り、一人当たり牛肉消費量は54kgで世界第2位。
他にも、大豆生産量世界3位、トウモロコシ生産量世界5位、馬肉輸出量世界1位など、とにかく食い物に関しては軒並み世界の上位であり、通貨が紙クズになっても、何かしら食って生きていける国といったところでしょうか。
米国上場ADRは18ほどありますが、やはりこの国の強みは資源ですから、注目は「YPF(ヤシミエントス・ペトロリフェロス・フィスカレス)」で、アルゼンチン政府が51%の株式を所有する国有石油企業です。
アルゼンチンでは200本以上のシェール油井が立てられていますが、そのうちの約半分がYPFのもの。YPFは伝統的な油田からも生産していますが、2020年時点で、全体の3割がシェール油田からの産出です。
株価はこの1年で3倍近い値上がり。
アルゼンチンの主要企業に投資する「Global X MSCI Argentina(ARGT)」は、YPFほどの1本調子ではないものの、1年間で40%近い上昇。なお、ARGTにおけるYPFのシェアは7%と2番目で、トップの20%を占めるのは「メルカド・リブレ(MELI)」というeマーケットプレイスを運営する電子商取引企業です。同社の顧客はブラジル、メキシコ、コロンビア、チリ、ウルグアイなどに広がり、さながら南米のアマゾンといった存在感です。
ARGTとMELIのチャートです。
南米には行ったことがありませんが、24時間飛行機に乗り続けられる体力があるうちに、一度は自分の目で見ておくべきかもしれないと、今ふっと思いました。
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