投資観点でのエジプト
古代文化が花開いたエジプト。
面積は日本のおよそ2.6倍、スエズ運河をはさんでシナイ半島まで広がっており、イスラエルとも国境を接していますが、 国土のほとんどは砂漠に覆われおり、利用されているのはナイル川沿いの5%に過ぎないとも言われています。
今から5000年前の紀元前3150年ごろに世界最古の王政国家が誕生し、プトレマイオス朝がローマのオクタヴィアヌスに滅ぼされるまでの約3000年間、安定して栄えたとされていますが、その後の2000年間は、世界史の中で特に目立った活躍は思い当たりません。
かつてのエジプトはローマ帝国の穀倉と呼ばれるほどの小麦生産を誇っていましたが、今では小麦の輸入額が世界一と大転落。
統計によると、2020年の小麦輸入量は1,289万トンで、そのうちロシアからが780万トン、ウクライナから318万トンと、約9割を両国に依存しています。
人口が1億人を少し超えるアフリカの大国ですが、その経済基盤はスエズ運河の通行料、観光、出稼ぎ送金、および生産性の低い農業に依存しており、基本的な食料が海外頼みのため、毎年400億ドル相当の慢性的な貿易赤字に苦しんでいます。
2011年、エジプトにも「アラブの春」が到来し、30年続いたムバラク独裁政権が打倒されましたが、この背景には、ロシアとウクライナが天候不順によって穀物の輸出制限を行い、食えなくなった民衆の怒りがありました。
しかしながら、民主化を期待されて次に政権を担ったムスリム同胞団のムルシーは失政を重ねた上に、人事では文字どおり「同胞びいき」が目立って国民が反発。
結局は軍事クーデタとなり、その主導者だった軍人のシーシーが2014年の大統領選挙で勝利し、以降エジプトを統治しています。
GDPの1割以上と言われる観光収入が疫病によって途絶えたこの数年間は通貨価値が減少し、昨年10月にIMFから支援を受けて変動為替相場制へ移行しましたが、更に通貨が売られてインフレが高進する悪循環となり、足元のインフレ率は26%と、2020年の3%台から大幅に悪化しています。
エジプトポンドとドルの5年チャートです。
このようなエジプトを買うなら、「VanEck Egypt Index ETF (EGPT)」がありますが、じり下げ模様です
エジプト株のPERは8~9倍程度。
一人当たりGDPは4100$で、スリランカやモロッコ、アジアだとインドネシアと同程度です。
ADRで買えるのは、コマーシャル・インターナショナル・バンク(CIBEY)と、陶器のレシコ・エジプト(LECIY)くらい。CIBEYは「iShares MSCI Frontier and Select EM ETF (FM)」にも組み込まれており、直近2022年決算ではEPSが前年比+20%と、ここ数年の業績は悪くはなさそうです。
砂漠の多いエジプトには多くの油田が発見されており、1980年代には輸出の3分の2が石油でした。当時の最大の輸出先がイタリアであることは、ローマ帝国とクレオパトラの結びつきを思い起こさせますが、石油産出量が減った今、今後期待されているのは東地中海のガス田です。
その開発のため、かつて中東戦争を戦ったイスラエルとも協力する協定が結ばれています。
クレオパトラの時代、エジプトは小麦をローマへ送っていましたが、現代のエジプトは、エネルギー確保に苦しむ欧州へガスを供給することで、足りない外貨を獲得しようとしています。
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