今年の相場(2023年)
2023年の相場が終了。S&P500は+24%、NASDAQは+43%、日経平均は+28%でした。
米長期金利は3.88%→3.87%。一時は5%に迫って世界を慌てさせましたが、終わってみれば年初水準に回帰。ドルインデックスは103.5→101.4と下落、ドル円は132円90銭→141円と円安。
この1年、FFレートは4.5%→5.5%と上がりましたが、2年金利は4.43%→4.25%と下げています。米インフレ率(CPI)は、6.5%から3.1%に半減しました。
即ち、長短実勢金利は上がっておらず、ドルは決して強い通貨では無いのに、円が更に弱いということが再確認されました。そしてFRBは「下げ遅れている」といった風景に見えます。
見方を変えると、これだけのFFレートの上昇にも関わらず、米景気が持ちこたえたことが想定外であり、来年はいよいよ高金利による副作用が顕在化して景気は弱くなり、FRBは複数回の利下げに追い込まれるというのが、メインシナリオかと思われます。
CMEのFedWatchによると、1年後のFFレートは3.75~4.0%が予想最多。8回のFOMCで6回の0.25%幅の利下げが実施されるというハト派予想となっています。
日本株は3割上昇と言えば聞こえは良いのですが、上半期が+27%、下半期は+1%という、歪な結果が気になります。また、ドル建て日経平均は+19%であり、上昇分の3分の1は円安効果と理解されます。
この円安は、利上げできない日本の借金体質がインフレ下で顕在化した、と表現できます。我が国の財政規律の緩みは恥ずかしいほど酷く、危機感が無いままに新たな財政支出が決まっていきますから、市場のどこかにペナルティが発生するのは当然過ぎます。
アメリカのように、頻繁に国家の債務上限が議論されないのは、赤字国債を発行できる特例法が繰り返し制定され、現在は2025年度まで延長されているためで、いわば見たくないものを先送りすることが国民的合意になっているからです。
なお、S&P500とNASDAQを2年間(2021年末との比較)で見ると、それぞれ0%、4%安。
この数字を見る限りは、2023年末は2022年の下げを取り戻してリスタート位置にあると言えそうですが、個人的な感覚としては、来年の利下げを先取りして成し遂げた反発にも思えるので、行き過ぎた楽観には注意したいところです。
コモディティ市場では、金(ゴールド)が+13%と、主要商品の中で最も上昇したアセットとなりました。どの通貨にも強い信頼感が存在しない上に、どの国も財政規律が緩んでおり、引き続きゴールドは有望と考えます。
逆にWTIは11%安と、大きく下落しました。ロシアの石油を買うのは中国とインドで9割。特にインドは割安価格で購入して、加工した石油製品をEUに「定価販売」しているとされています。
イスラエルとハマスの戦争が、レバノンやイランとの紛争に拡大する可能性はありますが、かつてのように、中東産油国がパレスチナのために団結して石油を武器に戦うといった姿は、今のところ見られません。
またOPECプラスの結束力は弱まっており、2019年のカタール、20年のエクアドルに続いて、今年はアンゴラがOPEC脱退を決めました。
世界のリーダーたるべき米国大統領は、ウクライナとイスラエルに対する武器商人に成り下がってしまい、戦争を止める力がありません。
2024年の株式相場予想を眺めると、強気の人が目立ちます。
現職大統領が再選のため、持てる力を総動員して景気浮揚と株高に努めるだろうという一種のアノマリーですが、バイデン負けを市場が予想すれば、一気に前提が崩れます。
例年にも増して、1月の相場が1年を語ることになりそうです。
今後、金利低下によってドルが弱くなるなら、新興国への資金流入が増えるというのが一般的な考え方です。新興国は概ねドル建て借金が多く、ドル安は返済負担を軽減させます。
しかしながら、新興国の主役だった中国は、ハンセン指数が14%安で、4年連続の下げ。上海総合も5%安。
不動産バブルが崩壊してバランスシート不況に突入し、日本型のデフレ経済になった可能性が濃厚ですが、それでも市場が期待するような大規模な景気刺激策には躊躇している様子です。
そもそも習近平にとって経済は最優先ではなく、リーマンショック後の4兆元経済対策が不動産バブルを呼んだことを反省している点や、西側の常識を拒む歪んだ愛国主義的思想(?)が、大胆な政策を阻んでいる背景かと思われます。
また外国資本の誘致や保護は口先だけであり、いつスパイ法で逮捕されるか分からない国からは、ヒトもカネも逃げ出しています。
インド株は消去法的に買われる可能性が高そうです。
今年のインド株は、代表的なインデックスであるSENSEXが+19%、NY上場の「EPI」は+26%と好調でしたが、同じくMSCIエマージング主要5か国である台湾加権指数の+27%、韓国KOSPI+19%、ブラジルのボベスパ+22%と比べて、突出したパフォーマンスであった訳ではありません。
とはいえ、人口で中国に対抗できるのはインドだけであり、現在の一人当たりGDP2400$はあまりに低く、例えばインドネシアの4800$に追いつくだけでも倍化が期待できます。2倍になるということは、7%成長が10年続くという魅力的なロングストーリーです。
宗教対立やカースト制による差別、掛け声の割に製造業が伸びていないといった点は気になりますが、何といっても平均年齢28歳という人口動態が成長に有利ですし、現状の立ち遅れた面は全て伸びしろが大きいと、投資家は楽観的に捉えるだろうと思われます。
脱中国の候補としてベトナムも頻繁に語られますが、金融市場での評価はパッとしません。主要株式指数であるVN指数は+14%ですが、NY上場のVNMは+9%と、原資産にも見劣りします。
GDP成長率は目標の6%に対して5%と未達。中国の景気低迷の影響を受けやすく、個人消費が冴えず、期待に応えられない現実となっています。
我々の生活に直結するのは為替。
ドル円は円安材料ばかりだった2023年に比べて、円高材料と円安材料が拮抗しそうなので、今年よりは低ボラな動きを予想しますが、130円の円高リスクに備えておくべきという考えに変わりはありません。
2022年夏以降のドル円は、130円~150円のレンジ相場とも見ることが出来ますから、逆に言うと130円なら買いに行くつもりです。
ドル安要因は、何といってもFRBの利下げがメインですが、日本の貿易収支の改善期待もあります。一方、新NISAによる米株投資は新たな円安材料ですし、依然として脆弱な日銀のバランスシートも潜在的な不安材料です。巷間話題となるマイナス金利解除は、銀行間金利の0.1%の話ですから、ただのノイズと理解しています。
国寂れて大谷あり。
皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。
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